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旅館の課題を解決! メインエントランスのリフォーム事例
【宿泊施設バリアフリー化促進事業費補助金の活用⑤】

前回の記事では、「宿泊施設バリアフリー化促進事業費補助金」を活用して、「客室」の水まわりのバリアフリー化リフォームに取り組んだ温泉旅館の事例をご紹介しました。
今回は、同じく補助金を活用して「共用部」のバリアフリー化に取り組んだ、伊豆半島のほぼ中央、天城湯ヶ島にある旅館『水のみち 風のみち 湯ヶ島たつた』(以下「たつた」)の山田社長に、リフォームを決めたきっかけや補助金の申請、施工中の営業状況、リフォーム後の効果についてお話を伺いました。

取材にご協力いただきました
山田 大介(やまだ だいすけ)さん

株式会社たつた代表取締役社長。天城の渓谷沿いに佇む和風温泉旅館『水のみち 風のみち 湯ヶ島たつた』を経営する。伊豆・箱根では唯一の渓流を望む川床があり、一年中楽しむことができる。

創業60年の温泉旅館「たつた」は全24室。源泉掛け流しの湯と、天城の澄んだ川のせせらぎを一年中楽しめる「川床」を目当てに訪れる客層は、夫婦やカップルが中心。

メインエントランスの段差を解消、館内を靴のまま利用できるように

「たつた」は2018年12月に、メインエントランスにスロープと手すりを設置し、館内を靴のまま利用できる仕様にリフォームしました。以前のエントランスは畳敷きのため、靴を脱いで上がり、さらに一段降りてスリッパに履き替えなければいけない造りになっていました。お客様が履物を着脱する際に立ったり座ったり、段差の昇り降りを繰り返すのを見ていて、山田さんはずっとその不便さを宿の課題として捉えていたそうです。
現在の新規顧客は20代~40代の層が中心とはいえ、リピーター客の多くは40代~50代。この先シニア世代になっても長く利用してもらうことを見据え、「宿泊施設バリアフリー化促進事業費補助金」を活用して、お客様がスムーズに出入りできるエントランス作りに取り組むことを決めました。

補助額上限500万円(1/2補助)の「共用部の改修」が対象の補助金を活用。履物や下駄箱も撤去し、和風旅館の趣はそのままにすっきりとした印象に。
(施工:住友林業ホームテック株式会社)
補助額上限500万円(1/2補助)の「共用部の改修」が対象の補助金を活用。履物や下駄箱も撤去し、和風旅館の趣はそのままにすっきりとした印象に。
(施工:住友林業ホームテック株式会社)

工事のスケジュール調整を徹底、売上への影響を最小限に

バリアフリー化リフォームを行うにあたり、2018年6月に施工業者の協力のもと申請手続きを開始しました。当初10月後半に着工の見込みでしたが、補助金窓口との確認が数回発生したため、観光庁へ提出する申請書類のやりとりに予定外に時間を取られてしまったそうです。実際に着工できたのは12月初旬、補助金完了期限である12月末までには工事を終わらせる必要があります。
そこで、事前に工場で手すりを作っておくなど、現場での作業がスムーズになるような準備や工夫を施工業者に率先して行ってもらい、大掛かりな工事は休館日の2日間に集中して実施。同じタイミングで小規模な客室リフォームにも取り組み、なんとか完了期限内、繁忙期を迎える12月末までに完了することができました。
旅館営業に影響しないように進めてもらうため、施工業者とはスケジュールの調整を細部まで綿密に行ったそうです。「申請作業も含め、施工業者の協力がなければ、今回工事完了期限までに終わらせることができなかった」と山田さんは振り返ります。

同じタイミングで、客室対象の補助金(上限100万円)も活用し、一部の客室入口をリフォーム。手すりを設置し、トイレ入口の段差を解消した。チェックアウト後の宿泊客のいない時間帯を中心に工事を行った。
(施工:住友林業ホームテック株式会社)
同じタイミングで、客室対象の補助金(上限100万円)も活用し、一部の客室入口をリフォーム。手すりを設置し、トイレ入口の段差を解消した。チェックアウト後の宿泊客のいない時間帯を中心に工事を行った。
(施工:住友林業ホームテック株式会社)

バリアフリー化の思わぬメリット

「以前は、お出迎えのためにお客様をお待たせしてしまう場面もありましたが、靴のまま入れるようになった今は、エントランスからフロントまで自然とお越し頂けるようになりました」
山田さんいわく、お客様のチェックインとチェックアウトがスムーズになったとのこと。「たつた」の宿泊客の約2割を占める外国人宿泊客は大きなスーツケースを利用する方も多く、土足は好評だそうです。
また、スーツケースや車椅子を持ち上げたり、脱いだ靴を管理したりといったお客様対応がなくなったことで、スタッフの負担もかなり軽減されたと言います。図らずもバリアフリー化が、旅館のコンセプトである、お客様との距離感を大切にする「つかず離れず」に、添えるかたちになりました。

「長く旅館の経営を続けていく上では、定期的なリニューアルが不可欠です。今年も予定していますが、どの補助金が活用できるのかは常に確認しています」と話す山田さんは、今後も宿の付加価値向上のため補助金を積極的に活用していきたいと考えているそうです。

※本記事は、2018年度の「宿泊施設バリアフリー化促進事業費補助金」の活用情報をもとに取材を行っています。

補助金の申請からバリアフリーリフォームの相談ができる
住友林業ホームテック株式会社
https://www.sumirin-ht.co.jp/
1988年設立。住友林業のリフォーム事業を担うグループ会社。住宅事業で永年培った総合力で宿泊施設の内装リノベーションをプロデュース。全国を70の拠点でカバーしている。

ご相談はこちらから
メール:ht_shoken@sfc.co.jp
電話:03-5217-6513(担当/佐藤 健太郎)

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高山 しのぶ(たかやま しのぶ)
この記事は私が書きました
高山 しのぶ(たかやま しのぶ)さん

美術大学卒。デザイン職を経て、輸入玩具を扱う専門商社と教育系出版社で幼児向けサービス・商品開発やマーケティング業務に従事。現在は、デザイン・サービス開発を通して培った“聞き取り力”を武器に、業界を問わず幅広いテーマでライター・エディターとして活動中。

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