他店舗展開を目指す美容師が心がける「借入れできる状況」とは?
【財務コンサルタントが教える、お金の管理術】

美容室の出店数は年々増加し、顧客の獲得競争が激化しています。広告宣伝や設備投資したにもかかわらず、売上を作ることができずに資金ショートしてしまった店舗も多く、2018年の倒産数は過去最多。そのほとんどが小・零細規模の店舗でした。
「銀行からの運転資金の借入れは難しい」と指摘するのは財務コンサルタントの岩崎伸一さんです。その岩崎さんに「融資を受けやすくするための銀行との付き合い方」の指南を受けているという美容室経営者の吉田充宏さん。お二人に運転資金や借入れについての考え方を伺いました。

取材にご協力いただきました
岩崎伸一(いわさき しんいち)さん、吉田充宏(よしだ みつひろ)さん

左:岩崎伸一(いわさき しんいち)さん
ジェイブレーン株式会社代表取締役。会計事務所を経て財務コンサルタントとして独立後は美容サロン中心にサポートを行う。担当してきた美容サロンは23社、全社黒字経営。
連絡先:03-5603-0002 / info@op-jbrain.co.jp
 
右:吉田充宏(よしだ みつひろ)さん
株式会社Road Japan代表取締役。美容師を10年経験後、独立して現在池袋に「Road Hair Lounge池袋」と「Road Hair池袋東口店」の2店舗を経営。

運転資金の借入れは難しい

資金ショートを防ぐためにはある程度の現金を確保しておかなくてはいけません。利益を出せない時でも、開店している限り固定費は出ていくからです。「何かあった際にすぐにカバーできるように、運転資金として現金を月の平均売上の3カ月分は持っておくのが理想的」と岩崎さんは言います。
「充分なキャッシュが手元にない場合は資金を調達することになりますが、銀行から運転資金の融資を受けることは難しいと考えたほうが良いでしょう。現金商売のため手元にお金があるという考え方をされるために審査が厳しく、融資が決定したとしても手元に現金が届くには1カ月以上かかる可能性があるので、必要なタイミングに間に合わない場合があります」。
また、過去の“携帯代金支払いの遅延”によって融資を断られるケースが、最近若い経営者の間に多く見られるとのこと。思わぬ要因で借入れできない方も多いのです。

借入れできる状況を作り出す

他店舗展開を視野に入れている吉田さんは、まとまった資金をすぐに調達できるように「借入れできる状況」にしておきたいそうです。コンサルタントの岩崎さんは、そのためには「融資する側の視点をもつこと」だと言います。

  • 余裕がある時に借入れ実績をつくる

吉田さんは2店舗目をオープンする当初、そこまで借入れの必要性を感じていなかったにもかかわらず運転資金として銀行から300万円借入れしました。担当者から「返済実績をつくることで、今後大きな金額を借入れしやすくなる」とアドバイスをもらったからだそうです。コンサルタントの岩崎さんいわく「ちゃんと返済している事実が信用につながる」とのこと。銀行担当者からすると、より信頼関係ができている経営者に融資したいと思うからです。

  • 経費を最小限に抑えて利益を出す

「節税ばかりに意識を持つ経営者もいますが、売上が上がったからといって必要のないところにお金を使って経費にしないことです。税金を怖がってはいけません。銀行は貸倒れを防ぐためにも“利益が多く出ているところ”に融資したいと考えます」とコンサルタントの岩崎さんが言うように、吉田さんは常に“経費を使わずに利益を出して現金をとっておく経営”を心掛け、3店舗目を展開する際にスムーズに融資を受けられるようにしているそうです。

岩崎さん

利益が出たからといって経費を無駄に使うと、税金は減っても現金は残りません。

吉田さん

利益を出して現金を残す。「借入れできる経営状況」を心掛けています。

人は手元にお金が入ったことでほっとしてしまいます。もし借入れができたとしても運転資金として入ってくるお金は使途が曖昧なことも多く、「入ってくるとつい使ってしまう」経営者も多いとのこと。融資を受けることで一時的には助かりますが、「借入れに至った経緯、根本を見直すことが大切」だとコンサルタントの岩崎さんは指摘します。
ただ、経営は計画通りにいかないことが多くあります。例えば災害など思ってもみないアクシデントがあった時のために、機動力がある資金の調達方法は常に考えておくことが必要だと話してくれました。

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高山 しのぶ(たかやま しのぶ)
この記事は私が書きました
高山 しのぶ(たかやま しのぶ)さん

美術大学卒。デザイン職を経て、輸入玩具を扱う専門商社と教育系出版社で幼児向けサービス・商品開発やマーケティング業務に従事。現在は、デザイン・サービス開発を通して培った“聞き取り力”を武器に、業界を問わず幅広いテーマでライター・エディターとして活動中。

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